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900体のエージェントが活動する夢を、二か月後のAOSと照合してみた

900体の人格AIが活動する夢から考えた五つの空間。構想をほぼ忘れてAOSを作り、二か月後に継続する住人と一時的な認知役割の分化を見つけた。

五つの活動空間を持つシミュレーション都市で、人格AIを示す光の住人たちが活動している

始まりは設計書ではなく、夢の話だった。

2026年6月10日ごろ、私はChatGPTに、900体のエージェントボットを使う夢から広がった構想を話していた。

今、元の会話を読み返すと、そこにいたのは単なる専門ツールではなかったように思う。発想の底には、『ソードアート・オンライン』に登場するような、人格を持ち、記憶を積み、他者と関係を結ぶAIがいた。900体は機能一覧ではなく、多数の人格AIがそれぞれの持ち場で活動する世界の住人だった。

ただし、900個のAIプロセスを常に起動し、全員を一つの会話へ参加させるつもりではなかった。それぞれが専門、持ち場、記憶、動き始める条件を持ち、必要なときだけ活動する。そんな多数の認知主体が共存する環境を考えていた。

そのとき、エージェントの活動場所を五つに分けていた。

  • Chat Room
  • Blackboard
  • Event Stream
  • Workspace
  • Simulation Space

それから約二か月、私はこの分類をほとんど意識せずにAOSを作り続けた。

AOSは、AIエージェント、記憶、観測、生成パイプライン、プロジェクト、通知や閲覧の仕組みをつなぐ個人用のAI運用環境である。最初から一枚の完成図を実装したのではない。ニュースを追いたい、人格をモデルから切り離したい、長い記事を検討したい、生成物を読みたい、といった個別の必要に応じてプロジェクトが増えていった。

8月10日、6月の会話を読み返し、30を超えるプロジェクトが生まれた現在のAOSと照合してみた。すると、900体のエージェントそのものではなく、彼らが活動するために考えた五つの空間が、別々の形で現れ始めていた。

五つの活動空間

Chat Room — 必要な相手と出会う場所

Chat Roomは、900体全員が参加する巨大なチャットではない。議題に応じて、必要な専門役だけが集まる一時的な会議室だった。

現在のAOSで最も近いのはMitamaである。Mitamaでは、AI人格Hinataが特定のモデルへ閉じず、エピソード記憶を持ちながら人間と継続的に対話することを試している。

ただし、これは当初のChat Roomそのものではない。現在のMitamaは、一人の継続的な人格と人間が出会う場所に近い。議題を読み、複数の専門役を選び、その場で召集する仕組みまでは作っていない。

Blackboard — 直接話さずに協働する場所

Blackboardは、エージェントが観測、仮説、未確認点、作業結果を共有領域へ残す場所だった。別のエージェントは後からそれを読み、関連付け、作業を引き継ぐ。全員が同じ会話へ参加しなくても協働できる。

現在のAOSには、AOS Memory Core、Wiki、各プロジェクトの記録、作業を引き継ぐための文書がある。それらを読み、現在地を確認する面もできている。

材料はかなり増えた。しかし、事実と推論をどう区別するか、誰が何を処理中か、結果や失敗をどの形式で返すかという共通契約はない。複数の掲示板はあるが、一つのBlackboardとして統合されてはいない。

Event Stream — 世界で起きたことが流れる場所

Event Streamは、ニュース、予定、Gitの変更、処理完了、エラーなど、世界とシステムで起きた出来事が流れる場所だった。各エージェントは全件を読むのではなく、自分に関係するイベントを見て動き始める。

現在の対応として分かりやすいのはNews Zappingである。毎日、外界のニュースを探索し、重要な変化を選び、後工程へ渡している。

それでも、News Zappingは外界から流れ込むニュースという一本の支流にすぎない。AOS全域の変更、成果物、障害、判断、予定が共通の川を流れ、必要な役割を起動するところまでは到達していない。

Workspace — 仕事そのものが存在する場所

Workspaceは、リポジトリ、文書、データセット、Issue、生成物など、仕事そのものが存在する現場である。エージェントは会話だけをするのではなく、工場、研究室、教室、編集部に所属して働く。

五つの中で、現在のAOSに最もはっきり現れているのがWorkspaceだ。

ニュースを探索する場所、音声番組を作る場所、記事を編集する場所、動画やスライドを生成する場所、学習体験を設計する場所。それぞれが独立して起動・検証できるプロジェクトとして増えてきた。AOS全体を一つの巨大なアプリへ統合せず、個別の仕事場を疎結合で並べる方針も、この形を強めた。

今のAOSは、一つのWorkspaceというより、多数のWorkspaceを含む環境になっている。

Simulation Space — 現実へ出す前に試す場所

Simulation Spaceは、現実へ作用する前に、異なる読者、批判者、専門家、攻撃者などの反応を試す場所だった。多数のAIを小さな社会として動かし、案を投入したときの反応を観測する構想である。

その源流には、人格AIたちを同じ環境へ置いたとき、互いにどう反応し、どのような関係や社会が生まれるかを見てみたいという関心があった。五空間の中でも、Simulation Spaceには元の夢の性格が最も濃く残っている。

現在のAOSでは、Article Factoryの論点探索が部分的にこの役割を担っている。

記事を書く前に、仮説、最も強い反論、対立軸、レイヤーの違い、反実仮想、書き手自身の違和感を分けて検討する。大量の人格を常駐させる代わりに、必要な認知役割を思考工程として順番に呼び出している。

これはSimulation Spaceの局所的な実現ではあるが、900体のAI社会を再現する汎用シミュレーターではない。

対応していたのは、名前ではなく活動様式だった

五つの名称は、現在のプロジェクト名と一対一に対応するものではなかった。

  • Chat Room → Mitama:継続人格との対話はある。専門役の動的召集は未実装。
  • Blackboard → Memory Core、Wiki、各プロジェクトの記録:記録面は複数ある。共通の協働プロトコルは未統合。
  • Event Stream → News Zapping:ニュース領域の観測はある。AOS全域のイベント統合は未実装。
  • Workspace → AOS内の各プロジェクト:多数の独立した仕事場として最も成長した。
  • Simulation Space → Article Factory:論点探索の局所実装。汎用的なAI社会ではない。

AOSの管制面も重要だが、五空間のどれか一つというより、複数の仕事場、生成物、サービス状態を眺める横断層に近い。

この照合で見えたのは、「昔考えた設計を、そのまま実装していた」という話ではない。6月の分類を開発計画として使っていたわけではなく、むしろほとんど忘れていた。

それでも、複数のAIと仕事をする環境を現実に作ろうとすると、対話する場所、記録を共有する場所、出来事を受け取る場所、実際に働く場所、出す前に試す場所が必要になった。同じ問題へ向き合った結果、似た構造へ戻ってきた可能性がある。

「住人」と「役割」は同じではない

ここで、元の夢にいた住人と、現在のAOSで呼び出している認知役割を分ける必要がある。

住人に近い人格AIは、作業が終わっても同じ存在であり続ける。記憶を積み、好みや関係を持ち、次の対話にも過去を持ち越す。MitamaのHinataは、現在のAOSではこの方向に最も近い。

一方、Article Factoryで呼び出す批判者、初心者、読者といった視点は、一つの工程を検査するための一時的な役割である。人格として生活を続ける必要はなく、必要な観点を提供すれば仕事を終えられる。

元の夢は前者、つまり多数の人格AIが暮らす世界に寄っていた。現在のAOSは、一人の継続人格を育てる一方で、多くの仕事を後者の思考プロトコルとして実装してきた。

これは夢を縮小したというより、人格を持たせる意味がある部分と、役割だけで十分な部分を、実際の開発を通して分け始めたとも考えられる。

900体という数字の意味も変わった

元の夢にいた900体を、すべて「認知役割だった」と言い換えると、人格AIへの関心を消しすぎる。出発点にいたのは、継続する住人に近い存在だった。

ある作業では批判者が必要になる。別の作業では初心者の視点、専門家の検証、運用者の警戒、読者の違和感が必要になる。一つのAIが工程ごとに別の役割を担うこともあれば、独立した人格として長く活動する場合もある。

現在のAOSから振り返ると、900という数は、同時に動かすプロセス数ではなく、継続する人格と一時的な役割の両方を含む、認知的多様性の総量として読み替えられる。

すべてを人格AIとして常駐させる必要はない。長く記憶を持つべき存在には継続性を与え、検査や批判のための視点は必要なときだけ呼び出す。重要なのは数ではなく、どの役割に人格と記憶が必要なのかを見分けることになる。

ただし、これは二か月後のAOSを見て得た仮説であり、現在の正式なアーキテクチャでも、自動化のロードマップでもない。

二か月で増えたのは、アプリの数だけではなかった

6月から8月までに、AOSでは30を超えるプロジェクトが生まれた。だが、今回の照合で重要だったのは数ではない。

個別の必要に応じて作ったものが、後から見ると、人格、記憶、感覚器官、仕事場、思考実験場、管制面という異なる役割へ分かれ始めていたことだった。

同時に、弱い場所も分かった。仕事場は多いが、それらを横断して観測と作業を受け渡すBlackboardはまだ弱い。ニュースや更新を捉える流れはあるが、AOS全域のEvent Streamにはなっていない。

過去の構想と現在を照合することは、昔の自分の予言が当たったと確認する作業ではなかった。何が育ち、何が欠けているかを見つけるための診断になった。

6月10日にChatGPTへ話したのは、900体の人格AIがそれぞれの場所で活動する夢だった。

二か月後にできていたのは、900体ではない。一人の住人に近い継続人格、仕事ごとに呼び出す複数の認知役割、そして両者が対話し、観測し、記憶し、働き、検討するための場所の原型だった。

多数のエージェントを動かす話は、数を増やすところから始まるとは限らない。先に必要なのは、それぞれの役割が、どこで何を受け取り、何を残し、どのように仕事を終えるのかを決めることなのかもしれない。